一章 壊れたおうさま

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 マリーが病院の前を通り過ぎ、パレードが向かった方角へ道なりに歩き始めると、後ろから車の排気音が聞こえてくる。道いっぱいに広がったソリのようなものが、壊れた物たちをすくい上げていく。しばらくするとソリが持ち上がり、車の上でさかさまになって中身を落としていく。  左右に揺れる車から、壊れた物たちが破壊される小さな悲鳴が聞こえてくる。揺れが収まった後の車は一部の色が変化し、タイヤが大きくなって車高が上がり、ソリのサイズも一回り大きくなった。 「物を食べてるんだ…」  車はマリーたちの横を通り過ぎ、壊れた物たちを片付けるように食べながら大通りを遠ざかっていく。  車が通る間、歩道によけていた物たちが、道路を渡ったりビルの中に入ったりし始める。 「服、探そうか」  マリーはポケットを軽く叩いて周囲を見渡す。病院よりは町中のほうが、いろいろ見つかるだろう。ギルは目が出るくらい顔を出し、すぐにポケットの奥に引っ込んだ。 「うんー。なんかコワイね。マリーがいなかったら、今ごろオイラもあいつにやられて車の部品になってた気がする」
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