一章 壊れたおうさま

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「『夜』に会いたい。見つけやすい方法って何かあるかしら」 「さあね。町中じゃなくて、開けたところに行ったら探しやすいんじゃないかい」 「そういう場所、どこかありますか?」  リズは細い指で林の奥を指さす。 「ここを抜ければ林が途切れて川が見えるよ。そこからなら遠くまで見渡せる」  マリーはリズが指す方角を見てからギルに声をかける。「行こうか」 「ありがとうございます、おやすみの邪魔をしてしまってすみません」 「いいけど、気をつけなよ。『夜』に出会って壊された物がいっぱいいるんだ」  リズはそう言うと、腕をビスケットに挟まれたクリームの中に引っ込め、元通り地面の上に横になった。  マリーとギルは林の中を川に向かって歩き始めた。まばらに木が生えた林の中に時折、地面に横になったビスケットを見かけるが、生きているのかは分からない。黄色い三角形の木の葉が、緑がかった青く長い葉の上にそろりと落ちると、葉っぱはそのまま走り去っていった。  何が生きていて、何が生きていないのか、どこからが壊れていて、どこからが壊れていないのか、マリーにはまだ区別がつかない。 「ギル、周りに命がいるかどうかって分かる?」 「分かるよ! マリーは分からないの?」 「…私には壊れてるかどうかも分からないかも」 「壊れてるかどうかは、目を見ると分かりやすいよ! パレードの時はたくさん壊れてるやつがいて、みんな目を合わせてくれなかった。そうやって見分けるといいって教えてくれた物がいたよ!」
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