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「やるわ」
マリーが答えると、鏡は身体をやわらかく曲げて頭を下げた。
「この世界に命が芽吹き始めたら、『夜』も鎮まるはずですわ。その時には…」
鏡は言葉を切るが、マリーには鏡が言いたいことが分かっていた。
「私が身体を返して、みんなを統合するってことね」
「あなたがそれを選ぶなら。わたくしは強制しませんわ」
「大丈夫、返すから。私はもともと、生きることにそれほど未練があるわけじゃないの」
鏡は少し顔を曇らせる。鏡面に、マリーの姿が透けるように映っていた。
「あなたの名前は? ここでも教えてもらえない?」
鏡は黙ったまま身体を振る。
「わたくしの名前と、そしてあなたの身体が持っていた本来の名前も。ここで守り続けるのがわたくしの仕事ですから」
「…分かった。それじゃあ戻る」
鏡は身体を傾けて自分の鏡面を見る。
「わたくしに映るあなたの姿を見てくださるかしら。徐々に濃くなっていくはずですわ。あなた自身の姿に集中して。そう、だんだん姿が見えてきたでしょう…?」
鏡の中の世界に色がつき、音が聞こえてくる。マリーは右手にギルを握りしめたまま、白いビルの前に立っていた。
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