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赤の空
空一面が赤くなった。美しくなんかない。どす黒い赤色。赤い血が、だんだん僕に近づいてくるように見えた。
僕のすぐ目の前で血は渦を巻き、あっという間に夜に変わった。空は普通の黒なんかじゃない。黒い闇の中に、かすかに赤色が混ざっている。そんな不気味な恐ろしい色。空にきらめく星までが、どんよりした赤色に光っている。
こんな空を見たのは初めてだった。
逃げたくてもロープで固く木に縛りつけられているので動けない。
遠くでかすかに声が聞こえた。
「捕まった、助けてください! わたしは静かに暮らしたいだけなんです。ギャーッ」
男の人の泣き叫ぶ声。
「助けてくれ!だれか来てくれ!」
男の人の悲鳴。そして……。
「お母さん!助けて!」
「お父さん!こわいよーー」
女性の声。
「金太、まだ警察は来ないのか? 金太、守ってくれ、みんなのことを。頼む! ウワーーーーーーーッ」
空いっぱいに絶望の叫び。ずっとずっと長く続いた。
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