赤い部屋の顔たち

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赤い部屋の顔たち

 僕はいつの間にか、赤に囲まれた部屋にいた。それはどす黒い血の色。 赤の天井、壁、床。そして赤を背景に無数の顔に囲まれていた。  部屋中に色々な人の顔が並んでいる。どの顔も笑っていなかった。恐怖と苦痛の表情だった。  部屋中、絶望と悲痛な叫びが響き渡った。なんて恐ろしい光景だろう。  僕はといえば、手足を縛られ壁にもたれて座っていた。僕の足元に長い髪の女の子の顔があった。年齢は僕ぐらいだろうか。顔を歪めた泣き顔。大きく開けた口からは悲鳴が聞こえてきた。 「助けて! お母さん。もう一度会いたい」  その隣には、若い女の人の顔。目を白目にして口から舌を出していた。  横を向けば……。壁には苦悶の表情をした男の人たちの顔。  天井を見上げる。まだ小学生くらいの子どもたちの泣き顔が、天井いっぱい並んでいる。殴られたのか、目や頬が腫れあがった顔もあった。鼻が潰れた子が悲しそうな顔で、僕を見下ろしてくる。 「怖いよ、暗いよ」 「助けて、いい子にします」  そして僕の目の前には……。  赤の女性が仁王立ちしていた。   「半世紀前。この塔はわたし、マハー・カミラのものとなった。この者たちはそのときに、永遠の奴隷となった」  マハー・カミラさんという女性がおごそかな口調で言った。 「それから五十年。太陽が沈んでから赤の森に近づく者は、わたしの生贄として、この塔の中で死んだ」  マハー・カミラさんが僕の顔をのぞきこんだ。   「この部屋でな」  僕は怖くて、マハー・カミラさんの顏が見えない。 「この部屋にあるのは、五十年の間に、この部屋で死んだ者たちの顔だ」  赤の女性、マハー・カミラさんが部屋の中を見回す。
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