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マハー・カミラさんは意地悪すぎる
「今から死ぬ人間のかなわぬ妄想か。残念だったな。お前はいまから死ぬんだ」
マハー・カミラさんは本当に意地悪だ。僕の顔を見てニヤニヤ笑っている。笑わなくたっていいのに……。
「お願いです。春奈ちゃんにお別れの言葉を言わせてください。いままでのお礼を伝えたいんです。それから僕の気持ちも」
マハー・カミラさんが鼻で笑う。
「お前はお別れの言葉は話せぬ。今より鍋の中で、絶望の言葉を叫ぶがよい」
それがマハー・カミラさんからの宣告。
「お願いです。たった一分でいいんです」
「食事の時間はあっても、お前の願いを聞く時間などない」
返事を聞かされ涙があふれた。縛られてるから涙をぬぐうこともできない。 涙のしずくは、僕の顎をつついている赤い杖の表面に落ちていった。
「時間が来た」
「一言だけ、春奈ちゃんにお別れを!」
「一言も二言も許さん。お前は熱湯の中で死ぬ」
マハー・カミラさんの体が宙に浮いた。そのまま大きな鍋のすぐ上に浮かんだ。湯が煮えたぎる音が聞こえ、僕の全身からは玉のように汗が流れる。
僕は思わずつぶやいていた。
「春奈ちゃん。さようなら。今まで本当にありがとうございました」
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