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プロローグ 鶴葉下《つるはげ》さんの悲劇
東京都民ならご存知のはずです。東京都玉山市当麻町のことです。
東京のベッドタウンとして知られています。ところが私鉄の当麻駅より町はずれの高蔵寺行のバスに乗り、終点の高蔵寺で下車すると光景は一変します。
バス停の周辺には三十軒あまりの家がまばらに立ち、その間を田圃や畑が埋めています。群馬との県境には当麻大山がそびえています。
目前に、葉っぱが針のように尖った松や杉などの針葉樹が林立した森が広がっています。ですが、ここに緑はありません。けばけばしい血のような原色の赤。それが森の色なのです。どの松も杉も幹から枝、葉っぱに至るまで真っ赤なのです。
そうです。ここは赤の森なのです。
真っ赤な幹に真っ赤な枝、真っ赤な葉っぱの木々が立ち並び、風が吹く度に断末魔の悲鳴のような音を立てるのです。
夕焼けが闇に変わる直前、この森からは絶望の叫びや泣き声が聞こえると噂されていました。
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