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降ってきた物を拾ってみると、それは確かに"人骨"だった。震える古田の横で、男が「あ」と声をあげる。
「これ......僕だ」
「はぁ!?」
どうやらこの男の死体は、自殺が起きた事を隠そうとする大家によって、ここに遺棄されたらしい。本当に怖いのは人間......といったところか。
「......ありがとうございます。これで僕も成仏できます」
「......まぁ、良かったな」
「えぇ。では、さようなら......」
男はそう言って手を振ると、眩しく輝いて散った。どうやら俺は、成仏の瞬間を目の当たりにしたらしい。
「......ジジイはいいのかよ」
「ほっほ。わしはここで、死のうとする人間に説教をさせてもらうよ」
「......そうかよ」
あっさりとカッコいい事を言われてしまった。古田はポケットに忍ばせておいた煙草を吸って、どこまでも続く空を見上げた。
「いやぁ、いい話ですねぇ」
「何だよお前」
翌日。朝日の眩しさに目を覚ますと、昨日成仏したはずの男が座っていた。
昨日のあの感動は何だったんだ?
古田は図々しく食事を摂る男に向かって、枕を投げつけた。
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