起死☆回生

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起死☆回生

 突然で申し訳ないのですが、僕は死にました。  原因は首吊り自殺です 当時、一人暮らしをしていたこの部屋で首を吊り、僕は自ら命を絶ったのです。 「......というわけなんですねぇ」 「"...... というわけなんですねぇ"じゃねぇよ。完璧、事故物件じゃねぇか此処」 美味しそうなチキンカツを食べていた古田は、突然、目の前に現れた幽霊に向かってミニトマトを投げつけた。  俺の名前は、古田。古田シンイチ。24歳。職業サラリーマン。そこそこに霊媒体質である。  春になり、念願の一人暮らしを始めたは良いが、やはり家賃の安い部屋は借りるべきではない。事故物件である可能性が高いからだ。 「いや、でも待ってください。僕が死んだから、この部屋の家賃は、他の部屋よりずーっと安いンですよ?有り難いじゃないですか。僕の死は無駄では無かったって事です」 「自殺って行為そのものが無駄だろ」 「?なんでですか」 「お前が死んでも誰も何も変わってねぇんだよ。親は元気だし、別れた恋人は次の恋人見つけてるし」 「貴方の生え際も後退してるし......と?」 「祓うぞお前。何なんだよ」 古田の突っ込みにもビクともせず、幽霊は腕を組んで話を続ける。 「まぁでも確かにそうですね。僕が死んでも、皆が悲しんだのは7時間くらいでした」 「短すぎるだろ。もっと悲しめよ」 揚げたてのチキンカツを頬張ると、サクッといい音がした。目の前の愉快で可哀想な幽霊を見ながら、美味しい夕飯を食べる。 「まぁでも、とにかくですね?僕が貴方の目の前に現れたのは他でも無いんです。頼み事があるんです」 「頼み事ぉ?一体なんだよ」 「樹海ありますよね?あそこに僕の肉体があるので、それを見つけて欲しいンです」 成る程。どうやらこの男の肉体(遺体の事であろう)は、樹海に放置されているらしい。 「......ん?樹海??」 ちょっと待て。古田は箸を置いた。 この男は、此処で自殺したんだろ?じゃあなんで、その死体が樹海に? 古田は十数年振りに頭をフル回転させたが、答えが出ない。 「お前、此処で死んだんだろ?じゃあ何で死体が樹海にあんだよ。おかしいだろ」 「まぁそんな深い話はどうでもいいじゃないですか。ほら、日付変わる前に行きますよ」 「どうでもよくねぇだろ。基準がおかしいだろ」 そんなこんなで古田は目の前を浮遊する男と共に樹海へ向かう事になったのだ。
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