ぜったいぜったい

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八月三日。クーラーの効いた体育館に揃った在校生に教師に来賓に親族。大人たちは皆、正装で出席し、卒業生の入場を待つ。 入場の音楽が流れ、中学の制服を着た卒業生たちが体育館へと入ってきた。 休校措置により叶わないと思っていた卒業式が始まった。すでに中学生となった卒業生たちは恥ずかしそうにしながらも在校生たちの歌を聞き、来賓の祝辞を聞き、校長の話を聞く。 穏やかに流れる中、校長を話を締める前に直人を壇上に呼んだ。直人は呼ばれて校長の横に行く。 「今日この日、三月にできなかった卒業式を開催したのには訳があります。この直人くんが、卒業式を行うために署名をはじめたことがきっかけです。最後に直人くんにその理由を聞きましょう。直人くん、どうして署名をはじめたんですか?」 直人は深呼吸をする。 「僕には、お兄ちゃんがいます。本当だったらお兄ちゃんの卒業式は僕もいて三月に行うはずでした。それはお兄ちゃんと僕が一緒に出席する最初で最後の卒業式でした。お兄ちゃんが中学を卒業するときも高校を卒業するときも、その時は同じ学校の生徒じゃないから。新型コロナウイルスのせいで、三月の卒業式は叶わなかったけど、僕はどうしてもお兄ちゃんと出席する卒業式をやりたくて署名を集めました。そしたらほとんどの人が賛成でした。みんな僕の提案に賛成してくれました。お兄ちゃんに内緒を作るのは辛かったけど、驚かせたかったんだ。絶対忘れない卒業式を作りたかったんだ。お兄ちゃん、他の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます!」 直人の話を聞いていた優也の目に涙が滲む。 「直人のアホ!」 泣きながらそう叫んだ。 「お兄ちゃんこそアホ!無理なことなんかないんだ!諦めることなんかないんだ!やらなきゃ分かんないんだよ!」 拍手に包まれる。 2020年。新型コロナウイルスにより多くの卒業式が簡略化や中止になった。直人はそれに負けずに季節外れの卒業式を叶えた。お兄ちゃんと一緒の卒業をしたい。そのわがまま一つで。 卒業式を終えて、直人と優也は校門で写真を撮る。二人のその笑顔はこの夏休み一番の笑顔だった。
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