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全校生徒百八名。生徒の家族二百三名。教師二十一名。それらの名が署名されたノートを直人は六月の末に校長に提出した。
「よく頑張りました。私も反対ではない。ですが、これからが本番です。今から準備をしても夏休みに入りますよ?それでもいいですか?」
「はい!」
校長室に直人が声が響いた。それを聞いていたクラスメイトたちもやったと飛び上がる。教師たちに反対意見はなく、その日から練習が始まった。
飾り付けや歌の練習。本来なら三月にやっていたこと。教師も生徒もこっそりと動き、それは生徒たちの家族にも内緒にしてほしい旨が伝えられ着々と進んでいく。
「最近、直人楽しそうだな」
「そう?」
優也に言われて笑顔で惚ける直人。
「もうこそこそしないのか?」
「ううん。してる」
優也が吹き出してしまったものだから、直人も釣られて笑う。
「もうすぐ、いいことがあるんだよ」
夏休みが始まる。終業式で校長が体育館に集まった全校生徒にそれの日程やプログラムを説明する。決行日は八月三日。体育館の飾り付けはすでに終わり、練習すべきことはした。
あとは、招待される人が来てくれるかどうかだ。決行日の一週間前には全員に招待状を出すと教師たちは約束してくれた。
優也にその招待状が届いたのは七月二十九日のことだった。
「卒業式招待状?」
卒業した母校から贈られてきた葉書。それには三月にできなかった卒業式を夏休み中に行うというものだ。
「直人、知ってたの?」
「どうかな?」
「内緒にしてたのはこれか!?」
優也が直人の脇腹をくすぐり、直人はつい笑い出す。
「やめて!やめて!」
笑顔の優也を見て直人は腹の底から楽しいと感じた。
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