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「じゅん、これはフィクションでなんす」
「そうだけど……。ねえ、この本の作者は……?」
「分からないでなんす。……書いてないから」
「そっか。ねえ、ちなみにこの世界に井戸ってあるの?」
僕の問いかけになんすは考える。
「おいらたちの家から十分離れたところに一つぽつんとあるでなんす」
「そうなんだ。ねえ、なんす。紙とペンある?」
そう聞くと、なんすは眉を寄せた。
「まさか、じゅん。井戸に放り込む手紙を書く気でなんす?」
僕は頷く。
「うん。父さんも母さんも心配してるかもしれないし」
「それはそうでなんすが……井戸と池がポストになってるなんてこれはおとぎ話でなんす」
「試しに。ねえ、ある?」
「おいらたちの部屋に便箋があるでなんす。ちょっと待っててでなんす」
なんすはそっと部屋を出ていき、静かにまた戻ってきて、僕に鉛筆と便箋を差し出した。
「ありがとう。タヌキの便箋かわいい」
僕が床で手紙を書くとなんすも僕の隣で鉛筆を持っていた。
「おいらも、試しに書くでなんす。ええと……じゅんのお父さんとお母さんに」
手紙を書き終えると、なんすとこっそり家を抜け出して井戸までやってきた。
そこに書いた手紙をそっと入れると、僕となんすは微笑みあった。
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