三日月の夜

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「ありがとう、母さん」  僕はリビングの机に近づき保冷バッグを見ながら、僕は母さんに声をかける。僕が仕事のある日は文句も言わずむしろ喜んで欠かさずにお弁当を用意してくれるので本当にいつもありがたい。 「純のお弁当はお昼寝しすぎても間に合ったの! でもいつもより手抜きなの! ごめんね!」  母さんは申し訳なさそうに謝る。手抜きなんて話しているが、そうは思えなかった。料理が好きな母さんのことだ。手抜きと言ってるが多分彩りのあるお弁当に違いないと思うと今から楽しみで、そして嬉しくて、僕は微笑む。  仕事から帰宅した僕にお弁当が必要な理由は、僕が事務と工事現場の仕事をかけもちしているためだ。  事務の仕事を終えた僕はすぐ家を出なければならない。  夕食を食べられないので、その分をお弁当にしてもらい、それを持って工事現場に向かい、夕食は休憩中に持ち越している。  事務の仕事は社員、工事現場はアルバイトと勤務している。  もちろんかけもちは、会社も了承済みだ。  残業はどちらともない。  休みは基本土日だが、そこに工事現場の仕事が入る時もあったりする。その時は喜んでシフトに入れてもらっていた。
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