三日月の夜

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「聞いているよ。二人で旅行なんて久しぶりなんだからゆっくりしてきてね」  僕がそう答えると、父さんはほっとため息をついた。 「ありがとう。あ、そういえば母さん。明日は……十一月八日だよな?」  父さんははっとして、母さんに聞く。 「そうだけど……あ! そうだ! ……おじいちゃんの!」 「……おじいちゃん?」  僕はきょとんとして父さんを見る。そんな表情の僕を見て、父さんもきょとんとしたが、そうだったというように何度もうなずき、話し始める。 「あのな純、明日……というか今日の深夜なんだけど」 「深夜?」 「あのな、タヌキが」 「……タヌキ?」  突然思わぬワードが出てきて、僕は少し、驚いた。 「十一月八日。喋るタヌキが落ちてきたら、一緒についてってくれ」 「……何それ?」  父さんはしっかりもので、普段から物事を考えて話すので理解しやすいのに、今の父さんは何を言っているのかさっぱり分からず、振り返り、助けを求めるように母さんを見ると 「それそれ!」 と母さんは父さんに人差し指を小刻みに軽く指して、微笑んでいた。
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