胡蝶の夢

8/8
前へ
/8ページ
次へ
目を開いた。 一番最初に、見慣れた自分の部屋の天井が視界に飛び込んできた。 クリーム色で、丸いライトが見える。 ああ、ここは私の部屋だ。 安堵で、力が抜ける。 ゆっくりと、上半身を起こす。身体は、夢の中のように、重いままだった。 汗と涙で、枕やシーツは濡れていた。 この世界が現実なのか、はたまた夢なのか分からなくなりそうだった。 ひょっとしたら、あの無限に続く部屋の中が現実かもしれないとさえ思った。それほど、あの部屋にいた時に感じた絶望感と閉塞感は、自分が「現実だ」と認識している世界のものと近かった。 ベッドの上で身体を起こす。 私は、このまま、この世界に何も生きた証を残さないまま、夢の中のように死んでいくのだろうか。あの扉の先に進んだら、世界は変わるのだろうか。 膝を立てて、そこに顔を埋める。 時計の秒針が、流れている時間を均等に刻んでいく。 私は、顔を埋めたまま、小さく呟いた。   どうか、どうか、この世界から私を 救ってください。 誰か、この孤独な世界から私を見つけて、そして高い所まで引き上げてください。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加