胡蝶の夢

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その夜、夢を見た。 気がつくと、私はパジャマ姿で一人である部屋の床に座っている。 ぼんやりとした輪郭がふやけた状態から、徐々に輪郭がはっきりとしてきて、今自分がどこかの部屋の中にいて、その床に座っているということを認識する。 部屋の中をぐるりと見渡す。 家具は一切なく、床にはピンク色の薄いカーペットが敷いてある。 何かあるとすれば、私が座っている場所から、一直線上に扉が一枚あるだけだ。 ドアは、焦げ茶色で、金色のドアノブがついている。一枚プレートがかかっていること以外は、ただの普通のドアのようだった。 私は、ゆっくりと立ち上がって、ドアの前に立つ。 ドアには「6月19日」という日付が彫ってあるドアノブと同じ金色のプレートがかかっていた。 確か、今日の日付である。太宰治が入水自殺をしたとされているのが本日だという内容のニュースをやっていたということを何故か思い出した。 私は、ドアノブに手をかけた。右側に回すと、カチャという乾いた音がして、扉が開いた。
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