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一体、どれほどの距離を走っただろうか。
足は動いているはずなのに、扉を開いても開いても全く景色が変わらないので、一歩も前に進んでいないのではないかという錯覚に陥り、頭がおかしくなりそうだった。
だいぶ時間が経ったような気がした。
どれくらい走ったのだろう。
何枚、扉を開いたのだろう。
息が徐々に上がり、足を動かすスピードはだんだん遅くなり、額から汗がしたたり落ちた。
先へ、先へ。
もっと先へ。
先に行かないと。
焦る思いからか、次の扉を開けた瞬間に、足がもつれて、身体がカーペットの上に投げ出された。
全身が床に叩きつけられる。
私は、うつぶせで倒れこんだ。
休みなく走り続けてきたので、脇腹が痛く、息がうまくできない。
なんとか、身体を起こそうとするも、全身や足の裏に鋭い痛みが走り、断念してしまう。
私は、わき腹に痛みがくることを承知で、顔を上げ、深く息を吸い込んだ。
「誰か!!!!」
私は、出来る限りの力を振り絞り、叫んだ。
私の声は、少しだけ反響して、この部屋の天井に吸い込まれていった。
「誰かいませんか!!ここから出たいんです!!助けてください!!」
こんなに誰かに助けを求めたのは、久しぶりだった。
私の声はむなしく、部屋の中に響いて消えていった。
身体はカーペットに吸い付いてしまったかのように、全く動かない。
すると突然、キイッと扉が開く音がした。
誰か来てくれた。反射的にうつ伏せにしてた顔を上げて、扉を見て、私は言葉を失った。
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