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6
ギアが次に目を覚ますと、自室の天井だった。そして、自分がベッドにいることも予想がついた。
「ギア。おはよう」
エドラが視界の端で微笑んでいた。
「おはよう」
「どうだった? リエラは」
「……少し、話せた」
「そう。良かった」
「うん」
エドラは微笑んだ。ギアはエドラの笑顔が本当に、本当に大好きだった。
「さあ、ご飯にしよう。今日は沢山作ったからね」
エドラは立ち上がってキッチンへ向かった。ふと見ると、今朝水を取り変えた花が美しく咲いていた。その足元には鋏が置いてある。
「ねえ、エドラ」
「何?」
「この花……切っても良い?」
「いいよ」
ギアはベッドの近く置いてあったゴミ箱を更に自分へ寄せた。そして花瓶から花を抜き取ると、ゴミ箱の上に茎を切り落とした。美しい花は花弁だけになった。。ギアはそれを手のひらにおいて眺める。
「ねえ、エドラ。人間は死んだら別の世界に行くの?」
「え?」
「リエラが言ってた」
「あー……そういう考えもあるね」
「……」
エドラは天国を否定する術を持っていたが、何も言わなかった。
「ねえ、リエラが言うには、エドラもそこに行けるかもしれないって」
「え、いけないよ。僕は機械だもの」
「でも、エドラは人間が大好きだろ」
「それは僕だけじゃない。皆好きだよ」
「それに、こっちで生きる時間が短い人は、死んだあと別の世界に行けるらしいから、きっとエドラも行けるよ」
「……だと、いいな」
「行けるよ」
「うん。ありがとう」
ギアは花を手のひらへ乗せたまま、エドラの方へ向かった。
「この花も、行くのかな」
「きっとね。きっと……」
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