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灰色の部屋
壁に投げつけられた黒い水が
音もなく滴り落ちる
僕はその上に 紅い水を投げつける
混ざりはしない 重なるだけ
より深くより重く
時計の針は不規則で
右往左往迷子のよう
僕は壊したいけれど
頑丈にできてて壊れない
苛立ちが身体に刻まれてゆく
再び僕は投げつけた
ありったけの黒を
ありったけの紅を
ありったけの白を
深く重なり無意味に落ちる
まるで"そこ"には 無かったように
微かに風が吹いた
生暖かいそれは ピリピリと肌を刺す
次第に強さは増していった
空を割る低い音が
部屋中に鳴り響く
目に映る程の熱さ
痛みの中僕は感じた
皮は爛れ 肉は飛び散り 水分は空に帰す
目は見えない 溶けたのだろう
痛みは消えた 脳も溶けた
不規則に動く時計の音が
微かに暗闇の中で聴こえる
頭に浮かんだ灰色の部屋
風はまだ吹いている
そのせいなのか 迷子の足音が
いつもより速く聴こえた
再び風が僕の肌を貫いた
僅かながら瞼の裏に光が射す
目を開けると 壁に投げつけた僕の全てが
僕めがけて飛んできた
風は止んだ 部屋も消えた
時の迷子も 今は歩き出している
そして僕は実感する
僕はやはり壊れている
そしてこんな僕が
僕たらしめるのだと
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