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その日は、朝からずっと雨が降り続いていて・・・夜になっても止む気配はなかった。
「ねえ、琴子・・・」
「はい。」
「オマエさ、好きな男とかいないの?」
いつものように2人でお茶を飲んでいると、何気ない口調で蒼哉が言った。
「え?」
いきなり、そんな事を聞かれても・・・
今まで、出来るだけ人と関わらないように生きて来た私にとって、恋愛など人生の一番遠いところに位置していた。
それに、私の身体は・・・すでに汚れてしまっているのだ。
たとえ誰かを愛したとしても、その傷痕は一生消えないと思っていた。
だから・・・
「好きな人なんて・・・たぶん、一生出来ないと思います。」
「何で?」
「だって、こんな汚れた身体じゃ・・・」
と、その時、テレビから流れて来るニュースの映像が目に入った。
『臥竜会の分裂によって抗争の危険が高まる中、ここ臥竜会総本部では、今日も・・・』
そして、テレビの画面に見覚えのある男の顔が映し出された。
「・・・伊藤。」
忘れたくても忘れられない、あの時の痛みと悲しみ・・・
私は、純血を奪われたあの夜を思い出して、一人、震える身体を抱きしめていた。
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