いやまさか聞こえてるとは思わねーじゃん!?

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 「あーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」  今時、河川敷で夕日に向かって叫ぶ奴なんていないって思うだろ? 残念ながらいるんだなー、ここに。  「梶原、俺のこと好きなんだって?」  「.............え、」  「っ、言い返さねーってことはマジなん? きっしょ。そういう目で見られてたなんて思ってなかった。マジでキモい。あり得ない」  「あの、」  「マジ気持ち悪い。俺そーゆーの無理だから今後近寄らないでくんね?」  「えと、」  「じゃあな。クソホモ野郎」  回想、終了! 終了終了終了でーーす! こぉんなクソみたいな回想は終了! 第一、俺が好きなのお前みたいなクソ野郎じゃないし! 勝手に勘違いしてイキってんじゃねーよこのクソ野郎!  俺が好きになったのは、俺みたいな陰キャにも優しくて、頭がよくて、気遣いのできる、優しい......あんな奴だとは思ってなかったけど。きっと別人だったんだと思う。なんて考えてみても、隠し通そうと思っていた恋心がどこからか好きな人の耳に入って、しかもこっぴどく振られた、という事実は覆されない。俺に残ったのは淡い恋心と、好きだった──まだ好きかもしれない、その人が思ったのと違うクソ野郎だったという最低な情報だけで。  深く息を吸い込んで吸い込んで吸い込んで......声にして吐き出した。  「バッカやろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」  そして小さく息を吸い込んで毒を吐く。  「マジで死ねだから陽キャはクソなんだクソ好きなだけ彼女とヤッてろよ」  そう言ったはいいものの、ちょっとだけ虚しくなって息をついた。足元に置いたカバンを取って家に帰ろう。そう思った瞬間、横からにゅっと出てきた頭に驚いて、せっかくとったカバンを取り落とした。  「ねぇねぇねぇいまちょっと見てたんだけどさ、君肺活量すごいね!」  「は?......あの、いや、なんすか」  「吹奏楽部、入らない!?」  背中に真っ黒でデカい何かを背負ったそいつは、やけにキラキラとした目で俺に声をかけてきた。勘弁してくれ。吹奏楽部なんて女子の温床だろ? クソ陰キャイキり野郎の俺にはつらい。あぁ違った。クソイキり野郎はあいつだ。  「ねぇ、吹奏楽部!」  「や、あの、興味ないんで、」  「いやでもその肺活量なら絶対うまくいくって! せめて体験だけでも!」  「あの、やめ、やめて」  「今日はまだ居残ってる子がいると思うよー! いこ!」  ガシっと手を掴まれてずるずると引きずられる。あぁ、自分のイエスマンが疎ましい。俺の中からでていけ、イエスマン。そもそもこいつ、性別はどっちなんだ。見た目じゃわからん。俺は今男に手を握られているのか、女に手を握られているのか。いやでも、とにかく。  「離せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」  俺、本日二度目の大絶叫。
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