第1章:浮所類 〜新しい隣人〜

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浮所類、33歳、ゲイ。 今が一番楽しい。 自分のセクシャリティに悩んだ思春期は、遠い昔。 小児科医としても一人前になり、 仕事も、私生活も、何不自由なく過ごしている。 そんな俺でも、 一つ悩み事があるとしたら、 最近引っ越してきた隣人から ひどく嫌われていることだろうか・・・。 「おはようございます。」 「・・・」 今日も朝からドアの前で出会した 180cmの俺よりも数cmほど背の高い 眼鏡面のサラリーマンは 挨拶をしないどころか、 視線を合わせようともしない。 彼の不機嫌さの理由に覚えのある俺が、 「あ・・・昨夜・・・もしかして 音漏れてました? すみませんでした。」 と謝ると、 いかにも真面目そうなその彼は、 顔を更にしかめて小さな息子の手を引き、 せかせかとちょうどドアの開いたエレベーターに乗り 俺を待たずにドアを閉めた。
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