2/14の後悔

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2/14の後悔

「あ、はい、コレ」 そっけない渡し方だったと思う。 朝鉢合わせた通学路。 少し前を歩いていた私は、今思いつきましたという感じで振り返って、ポケットから取り出してひょいと渡した。 思わず、という風に受け取ったケイスケは、手に載る小さい箱を見下ろして、それから私を見た。 「ほら、今日、バレンタインだから」 ケイスケが何か言う前にそう言ってさっさとその場を去ったので、その後、彼がどんな顔をしていたかなんて、わからない。 ただ私は、すたすたと速足で歩きだしながら、心臓ばくばく、顔は赤かったと思う。 そんな風に渡したチョコレートだから。 あれが本当は本命だったなんて、ケイスケはきっと思ってないんだろうな。 私を意識している感じでもないし、これまで通り変わらない態度。 ただ、私はどうかというと、あんな渡し方をしたことに、後悔している。 「何やってんの、かの子ってば!」 親友に怒られた。 だってね。 チョコレート、用意するだけでドキドキでね。 ただとにかく、絶対渡したいって、思っててね。 結果、ああいう感じになってしまった。
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