プロローグ

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 大陸に伝わる竜の伝説。それは、光の竜がこの世界を治めていたころの話だ。  光の竜には五匹の子供達がいた。  秩序を司るゴールドドラゴン、幸福を司るシルバードラゴン、正義を司るサファイアドラゴン、平和を司るエメラルドドラゴン、そして、愛を司るルビードラゴン。  五匹の竜は光の竜のもとに統べられ、大陸中にその恩恵をもたらした。世界は安定し、皆が幸せな生活を送っていた。  しかし、ある時、闇の世界から恐ろしい竜が現れた。真っ黒な鱗を持つその竜は『ダークドラゴン』と呼ばれ、大陸の者たちは恐れおののいた。  ダークドラゴンは光の竜が治める世界を破壊し始めたが、やがて光の竜によって倒され、その体は大陸の奥深くに封印されたのだ。  だが、それからしばらくして、ダークドラゴンとの戦いで傷を負った光の竜が命を落としてしまった。  光の竜の子供たちは、互いに協力しながら世界を治めることにした。だが、少しずつ仲違いするようになっていき、そして、再び闇の世界から黒い竜が現れた。  残された竜たちには、その黒い竜を倒せる程の力はなかった。だが、破壊されていく大地を見かねて、一匹の竜が決死の一撃を食らわせた。  黒い竜は闇の世界へと戻って行ったが、光の世界の竜たちも無事では済まなかった。  あるものは力を失い、あるものは命を落とし、そしてあるものは大地へ落ちた──。 「命が助かったとはいえ、光の世界の竜たちは、そのほとんどが力を弱めてしまった。いつまた、黒い竜がやってくるかもしれない。残った竜たちは、力を蓄えるため深い眠りについたのだ」 「うん。その話は私も知ってる。この大陸の子供たちは、みんなその話を聞いて育つんだもん」  そう。この大陸に住んでいる者たちは、子供の頃に竜の伝説を聞かされるのだ。親から子に。子から孫に。どんどん受け継がれていく。  だから、ソアラも、この話は母親から聞かされた。七才の時に亡くなるまでは……。 「でも、なんで今さら?」  ソアラは疑問に思った。竜の伝説とさっきの出来事が、何か関係あるのだろうか?  
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