7-7 [終]Cry.

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7-7 [終]Cry.

僕はこの世界の「観察者」 僕の前いた多くのボクは、定期的に回収され 地上世界が人間にとって将来的に有益であるか、無毒であるかを観測していた。 そのたびに、クローンの体は殺され新しい体へと情報が同期されていた。 管理者である凛と出会ったことは、自身が観察者であることを知れたきっかけであり何よりも地下世界を知る原因にもなった。 恋した彼女もまたクローンだった。 /地下にいる本物の僕と凛はすでに結婚までしていた。そして、彼らはすでに大人だ。/ 「みなと?顔色悪いよ」 高層ビル群の一つ。東京中央ビルの屋上から足を出して夜景を見ている僕の横で彼女はそう言った。危険と隣り合わせのこの場所では無駄なものがないだけあって地上はきれいだった。 「大丈夫だよ。それよりも僕思ったんだけどさ」 この前の地下でのこと以来僕は、クローンの僕らがいる存在理由を考えていた。クローンというのは、あくまでも本物のコピーであってアンドロイドではない。当然体調だって変化するし気分によって陽気だったり鬱々しいことだってある。 何が言いたいかって? 「地下世界の人間は、地上でも生きていけるんじゃないかって」 「でも、地上は本物では生きて...」 「なら。なぜ、僕らは生きていられるんだ? 本物コピーであるわけで、特別免疫があるかといえばそうではない。仮にそうだとしても本物の人間にだってできるはずだ」 /僕らが地上へ 本物の人間が地下にいる理由。それは、別に理由があるはずだ。/ 僕と凛は、また地下の僕のもとへと行くことにした。 *** 「やぁ僕。久しぶりだね 1週間ぶりじゃないか?」 「そうだね。それよりも話があるんだ。」 深夜というだけあって休憩室には誰もおらず薄暗い空間に自販機の明りがともっている。 「僕らが、クローンが地上にいる理由ってなに?」 「言わなかったけ?だから...」 「地球冷却化が始まる1年前から。政府の計画によって集められた研究者や学者 健康的な人体を持つものなどなど が選ばれてここにいる」 「そう。つまり、僕らだと地上に出た瞬間に低体温からの凍死してしまう。君たちは、<noise>によって...あれ?」 「何によって?」 僕がそう問いかけるも、肝心な部分はノイズのようになって聞き取れない。そして、それは本人もそのようだ。 「あれ?<noise>って何だっけ」 「なんて言っているんだ?」 「いや、だから<noise>... 文字で書こうか」 ぐちゃぐちゃの文字列がそこにあるだけだった。本物に至っては狂ったように文字を書き続けている。 「だから!だから!!!!!! なんでかけないんだよ!!!!!」 「もういいや」 繰り返す。ぼんやりとしているその声の後で、僕を抱える誰かがいる。 視界からは横で凛も倒れている。赤い液体が広がっていく。 僕だって体温が抜けていくような気がして... 「私たちだって知らないのよ。<noise>でも、このままにしておけば君たちは地上へは行けなくなる。自由がなくなる。だからリセットするわ」 っつ! いきおいよく起き上がるとそこは、真っ白な空間だった。ベッド以外には何もない部屋。隣にももう一つベッドがあってそこには凛がいる。 「凛! おきて」 眠たそうに起きる彼女に僕は安堵しつつも状況がつかめていなかった。記憶は残っている。 「起きたのね。二人ともおはよう」 本物の凛が部屋に入ってくる。何事もなかったかのように僕らを外へと連れ出す。 地上へ続くエレベーターに一緒に乗り込む。 「君たちが何を言いたいのか知っているわ。 なぜ本物の私が地上へ行くのか?でしょ」 「ダイジョブよ」 張り詰めた空気。エレベーターのモーター音が響く。 「といっても、私は地下への出口までしか行かないわ。でも、このエレベーターと地下出口のあたりは集音マイクは無いから 本当のことを教えるよ」 表情が変わらない彼女に凛は、手をつかみ聞く 「何がなんだか全くわからないのよ!」 「当然だ。普通の人間なら思いついたとしても実行しないからだ。」 /地球冷却化が起こったのは事実だ。ただ、それでも人間が生きていけないなんてことはなかった。文明が進んでいたからだ。20年前だったら本当に危機だっただろうね。/ 「だけど、この地球冷却化を利用しようとした組織があったんだ。お金持ちの富豪でも、権力者でもない 上級国民といわれる存在でもなく、ごくごく普通の大学生のサークルが利用したんだ」 /彼らはクローンという存在に興味を持っていたんだ。自分と同じもう一人の存在。完全コピーな自分が欲しくなったらしい。だけど、その実験をするには、莫大なお金と人員。それ以前に人権という抑止力があった。知識と技術だけはあったからその抑止力をどうにかしたかった。でもできない。 だけど、もし地上が危機的状況だ!という状況ができれば人は、温度管理しやすい地下へと避難するはずだ。つまり、その状況を作り出せば、地上から人を排除できると考えた。そして、<未来的に人間が再び地上に戻れるようにするために>という理由を作ればクローンを作りやすいわけだ / 「そして、計画通りに事は進んで君たちのようなクローンが大量に製造された。当然、バグやイレギュラーな存在が誕生するのはわかっていたから管理者や観察者といわれる上位存在を作ったの」 「その大学のサークルは何故ここまでできたの?ごくごく普通のサークルだったんでしょ」 「えぇ。普通なら実現することなんてなかった。だけど、偶然が重なったのよ」 /その偶然というは、地球冷却化によってライフラインが損壊。ネットワークが不通となり限られた通信(無線・ラジオ・テレビ)となった。加えて、非常用の施設内で発生した人間関係のトラブル。この先より寒くなるという恐怖。そして、政府機関の停止(人・モノが自由に行き来できない非常事態)によって統治ができない状況/ 「そして、デマが流されたの。地上は40日後には危険だと。地下には地球冷却化に備えてすでに都市があった。そして、各地の地下都市に避難したわけ。足りなくなった空間を埋めるためにも浅い地下部分に保存液を満たしたチューブを作り、基準に満たない人たちを保存させたのよ」 エレベーターが止まり目の前に並ぶチューブ。そこにいる人たちを指さし凛は、最後にこういった。 「わたしとみなと。私たちはその時のサークルの新入生だった。先輩である5人がこの計画を立てた時、私たちは逃げようとしたの。だけど、脅され刻々と実行される計画を止められずにここまで来たのよ。」 保存液に反射する照明の明りが、凛を照らす。緑色の保存液の色は光によって明るい黄緑色となっている。凛はその前で涙目になりながら最後にこう言った。 「私は直接的にはかかわっていない。だけど、私のすぐ近くで行われたこの事は、過去現在未来で最悪のことのはずよ。本当のことを知っているのは私とみなと。そしてあなたたちよ」 「その5人は、今はどうなっているの?」 「姿を変えて、今日もどこかにいるはずよ。この状況を改善させようとすれば必ずそれを阻止する。クローンの彼らも同じよ。だから気を付けて。」 僕らはそのまま地上へと出た。振り向けば、本物の凛はエレベーターに向かい歩いて行った。エレベーターの扉が開くとそこには手を振るみなとがいた。大きな声で本物は僕に言う。 「最悪を楽しめよ」 *** その後、僕らは地上で以前と変わらずに生活した。 変わらない行動。 依然として無意味に行われる僕のクローン更新。 すべてはこのまま変わることなく続くのだろうか。 「最悪を楽しめよ...か」 「私たちは高校生よ。来年の進路を考えよ」 「魔法少女にでもなろうかな...」 <終>
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