1.1-Freeze.

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1.1-Freeze.

/ここ東京市では、地球冷却化によって気温が10年前に比べ20℃以上下がりました。農業や観光業をはじめとして多くの産業が影響を受けました。 それでも、ここ2・3年で劇的に改善や改良がされた為 生活は充実したものとなりました。ですが、都市部の人口は「都市集中型」と呼ばれた2020年代に比べて激減し、地方都市への流入により景色や生活は変わりました。/ 「時間だ。次回は第2教室で授業だから忘れるなよ 終わり~」 午後1番の授業が社会学だというだけあって、クラスメイトの大半が眠そうだった。 映像では、今この国が置かれている状況やかつての環境についてを言っていた。僕の親や祖父母世代の話なのだろうが、意外にも身近には感じなかった。 窓から見える外の景色に雪が無かっただなんて考えられてないし、電車が雪で止まるだなんてありえないよ。 「冷却都市少女」 作:ysnb 「葉波?この後 エキナカのフードコート行こうよ」 「いいよ」 午後の最後の時限を前に友人が話しかけてくる。僕の数少ない友人であり親友だ。 話によれば、好きな映画について誰かに語りたくて仕方ないのだという。 嬉しそうに自席に戻る友人の背中を目で追いかける。そして、見回せばこのクラスが20人ほどしかいないのだと改めて知る。 *** 「それで、主人公の四葉っていうのが! そこで犯人を捕まえるんだ。それでもって、犯人が逃げようとするからテザー銃で撃つんだ」 フードコートに来てから1時間が経った。友人の映画の話もそろそろ終盤だ。僕自身も映画は好きだけど、それ以上にうまいことまとめられた彼の話を聞く方が面白い。 表情豊かなに多くの役者を演じるのだから滑稽だ。 「みなと氏!ありがとぉっふ」 「おう。また聞かせてよ」 友人と別れて僕は改札へと向かった。電車で数駅の場所に僕の家がある。 いつものように電車に乗り込み外を見る。 夕方でも雪かきをする保線員や交通誘導する警察官の姿。 絵本のような場面が繰り広がっていく。 /次は旧中央區です。国鉄線、波凪新都市線はお乗り換えです。右側が開きます/ 親から離れて暮らし寮で暮らしている僕は、時折プラットフォームで笑顔でいる家族ずれを見ると羨ましいと思うことがある。 そう思いつつ改札口を通り抜け寮へ向かって歩みを進める。その道すがら繁華街や地下街を経由する。 地下街は、地球冷却化が始まるよりもずっと昔からあるらしくレトロな喫茶店やゲームセンター、場違いなコンビニやドラッグストアなど楽しさがあふれている。だが、奥へ行けばシャッターが閉まっていていつ空いているのかわからないエリアもある。 「今日の夜食に何かお菓子...」 ドラッグストアに入りお菓子を買うことにした僕は、店内に入り決済をしようとしていた。 だが、 その時、ふと香る甘い香りがした。心地よいマリンの香りだ。 「お客様?カードでいいですか?」 「あっすみません」 急いで、デビットカードを差し出しつつも尋ねた。 「今香っている香りって どの商品ですか?」 「お客様の制汗剤ではなかったんですか?」 支払いが終わって僕は店舗の外でも嗅ぐと香りが奥の方から流れていることが分かってたどっていた。 だが、歩いていくうちに床のタイルが徐々に古く汚れていきシャッターが目立ってきていた。 そして蛍光灯の光がちらついているシャッター街の奥へと行くとボブカットの少女がいた。黒いパーカーに紺のチノパンが印象的だ。 華奢で色白な肌に蛍光灯のちらついた光が映えている。だが、顔には血しぶきが付いている。 「あなたは...誰?」 見た目に反して冷たく重い...でも透き通った声でその少女は問いかけた。 「僕は、葉波だよ。君こそ何をしているんだ?」 「私は... この世界を守っているのよ?」 「なぜ疑問形」 フッっといった表情で彼女は言った。 「知らなくていいことよ」 *** 目が覚めた。 目の前には、低いアングルからのシャッター街が見えていた。座って寝ていた僕の手には、香り紙が置かれていた。そこからは、僕が気になっていたマリンの香りがしていた。小さく<私の香り>と書かれていた。そして紙の裏には英語で<To me who can't assert myself>自分を主張できない私に と書かれていた。 「刹那的な出来事だったな」 僕は寮へ向けて歩いた。そして、寮について知った。 あの場所で僕は1時間以上いたのだということに。
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