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卒業式
中学3年の3月。受験が終わり、卒業式が迫っていた。
放課後、ジローの教室に行くと、ジローは泣いていた。
「どうしたの?」
心は少年でも身長177㎝のジローが学校の椅子に座って顔も隠さず泣く様子は不自然だった。
「オレ、知らなかったんだ。もうすぐ学校に来れなくなるなんて。」
「そっか。ごめんね。そんな大事なこと伝えてなかったか。」
私はジローと話したり、川本先生と三人でスキーに行ったり、ソリ滑りで遊んだり、凧揚げしたり、油絵を描いたり、サンドバックを力任せに殴り続けたり、その日その時の楽しい時間に夢中になっていて、手紙にも、卒業や別れの時が迫っていることを書かなかったことに気づいた。
「もう先生ともミューちゃんとも会えなくなるの?」
私は戸惑った。ジローの泣き顔を見ると、自分まで涙が出て来た。
「ここでは会えないけど。いつだって会えるよ。切手を貼って手紙を出すからジローもそうして。」
川本先生は、職員室に私を呼んで言った。
「ジローの気持ちを考えたら、もう手紙は出さない方がいい。ミユキにとってジローは100分の1でも、ジローにとってミユキは100分の90なんだ。ジローと結婚するつもりがないなら、ジローは忘れろ。」
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