卒業式

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 川本先生に、そう言われた日の帰り道、私は泣きながら真剣に悩んだ。私が経済的に安定した職業につけば、ジローと結婚しても楽しく暮らせるんじゃないかと思った。でもジローの家では、ジローを働き手として必要としていることも知っていた。  卒業式が終わった後、ジローの教室に行った。川本先生が私に丁寧にお辞儀して言った。 「今まで、ありがとう。最後に一つ、お願いがあります。お別れに、ジローに抱きしめられてやって下さい。」  私は胸がいっぱいで返事ができなかった。黙ってジローを抱きしめた。ジローは遠慮がちに私を抱きしめて、体を震わせてすすり泣いた。  私は思い切って言った。 「ジロー。車の免許取ったら私をドライブに連れて行って。一緒に海を見に行こう。遠い町まで遊びに行こう。きっと頑張って車の免許取ってね。」  ジローは明るい顔になって私を見た。 「オレ、頑張る。絶対、頑張ってミューちゃんを迎えに行く。」
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