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夢の中でお雛様とお内裏様が笑ってる。私は小さな赤ん坊だった。手をのばしてお雛様に笑顔を向けると、お雛様もお内裏様もにっこり笑ってくれる。私が産まれてからずっと一緒にいてくれる。なのになんで呪うなんて思ったんだろう。こんなに優しく私を見守ってくれているのに。安らいだ気持ちでいると、絹を裂くような叫び声がして目が覚めた。
「おひなさまが!おひなさまが!怒った!」
宏和が泣き叫びながら部屋の中に駆けつけてきた両親にすがりついている。窓の外は明るい。時計を見たら起きる時間には早いけど、外では人の声がする。ついでに犬が吠え声も聞こえてきた。ぼんやりしながらお雛様を見るけど、特に変わったところはない。
「落ちつきなさい。一体。どうしたの」
「お雛さまが、僕の顔じっとみていた」
「夢を見たんだろう。変ないたずらをするからだよ」
「お雛さまが宏和にもうやめてって言いに来たのかもね」
「もうしません~」
宏和は泣きながら謝り倒している。私はお雛様とお内裏様の顔を見る。
これ、お雛様の呪いとは違うよね?
宏和は泣いて謝った後寝てしまい、起きた後はけろっとしていたけれど、もうお雛様にイタズラしようとはしなかった。
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