鶏になった配偶者

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 私には、心当たりがあった。  夕べ旦那は、同級生の永田という、ろくでもない友人と、「コケ太郎」という新しくできた居酒屋で飲んできたのだ!  この「コケ太郎」というのが問題で、店主は外国で何か悪いことをしてきた人間らしいのだ。悪いルートで仕入れた、訳ありの鶏を夕べ旦那は食べたのだ。  私は嫌だった。こんな”とさか”の生えた人間と、スーパーに買い物に行ったり、一緒に実家の法事に出たりするのが。 「コケッ?コケッ?コケッ?」  旦那みたいな鶏が、悪びれもせず私の周りをグルグル回るので、私は腹が立ってきた。 「てめぇ、唐揚げにしてやるぞ!!」  言ってしまってから、私はハッとした。こんな鶏だか人間だか分からないものを、唐揚げにして食べたら、私まで"とさか"が生えてしまうのではないか?  つまりその、昨日旦那と永田が「コケ太郎」で食べたのは純粋な鶏ではなく・・・。 「いやぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」 旦那はコケコケと鳴きながら、いつまでも私の周りをグルグルと回っているのだった。
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