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「ジ、ジェラルド!」 「待ちなさい!」  やっとの思いで息子を取り押さえたときには、三匹は猫のすぐ足元近くにまで来ていました。両親は震えあがって、自分たちを見下ろす猫の輝く瞳を見つめるしかありませんでした。  ところが、アルマンとコレットの恐怖をよそに、猫は非常に優雅な仕草で傍らのバスケットの蓋を開けると、 「今夜はなんだかそんな気がして、ちゃんとカップを用意してあるんです」  と言いながら、とても小さなティーカップを出して、にっこり笑いながら三匹に見せました。b1dc4377-aaab-4d53-8ae5-f44bdd6f406f アルマンとコレットはもうびっくりしてしまって、猫の手のひらに乗ったその小さなカップを見つめました。驚きのあまり、それまで感じていた恐怖も、さっぱり忘れてしまいました。おまけにそのティーカップときたら、まるで本物みたいにつやつやしたヤマブドウの実と葉っぱが描かれて、口に施された繊細な金の縁取りが月明かりに照らされてきらめき、コレットなどは夢見心地になってその素敵なティーカップを眺めました。  ジェラルドはさっそくベンチをよじ登り、バスケットの下に広げられた赤いシルクのスカーフの上に座ってリュックをおろしました。アルマンとコレットも、ジェラルドにならってベンチを登り、ジェラルドを真ん中に挟む格好でスカーフの上に座り、リュックを傍らに置きました。  猫は三匹にティーカップを一客ずつ手渡すと、いつの間に湯が注がれたのか、同じくヤマブドウの描かれた小さなティーポットの口から、ほんの一滴ずつ垂らすようにして、三匹のカップに芳しい湯気を立てる紅茶を満たしていきました。それから、バスケットの中からバターとチーズの豊かな香りが漂うクッキーを取り出すと、三つのかけらに割って、やはり素敵なヤマブドウ模様のお皿に乗せて、三匹の前に置きました。 「ありがとう、猫さん。いただきます」  ジェラルドはさっそくクッキーにかぶりつきました。 「わぁ、おいしい! こんな美味しいの、ぼく今まで食べたことないや」  猛烈な勢いでクッキーをかじっては紅茶を飲み、至福の声を上げるジェラルドに、アルマンとコレットのお腹もぐぅぐぅ鳴りました。 「ご遠慮なさらずに、どうぞ」  猫は穏やかな声でアルマンとコレットを促し、二匹はお礼を言って、まずは紅茶に口をつけました。香り高いあたたかなお茶が喉を通り過ぎてお腹に落ちると、二匹はほぅっと感動したようなため息を吐き、それからクッキーにかじりつきました。バターとチーズ、それに松の実の風味が口いっぱいに広がって、体中を幸福の味で満たすようでした。  猫は三匹がお腹を満たしていく様子を満足そうに見ながら、時折自分もクッキーやティーカップを口に運びました。ちょうどよい頃合いで、三匹それぞれにお茶のお代わりを淹れてくれたり、新しいクッキーを取り出してお皿に乗せてくれたりしました。その仕草はどれもとても優雅で、非常に紳士的な態度でした。それで、食事が終わる頃には、すっかりお腹の満たされたアルマンとコレットも、このどこか風変わりな猫を気に入り始めていました。
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