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「いやぁ、大変なごちそうでした。素晴らしく美味しかった。ほんとうに、どうもありがとう」
アルマンが改めてもてなしへのお礼を述べると、猫は金色の瞳をますます輝かせてほほ笑みました。
「これはご丁寧に。お気に召していただけたなら結構です。ところで、申し遅れましたが、わたしはシャルル・ド・ラングと申します」
猫は首を少しばかり傾げるようにしながら頭のシルクハットをひょいと持ち上げ、自己紹介をしました。
「や、これは失礼。我々としたことが、自己紹介もせずに食事をごちそうになってしまうとは。わたしはアルマン。見ての通り、森の奥に暮らす野ねずみです。そしてこれは妻のコレットです」
「シャルルさん、はじめまして。ほんとうに、こんな素敵なおもてなしを受けたのなんて、生まれて初めてのことですわ」
コレットは感激に瞳を潤ませてお辞儀をしました。シャルルが優しくコレットに微笑みかけると、コレットは思わず頬を赤らめました。
アルマンは妻の様子を見て、わざとらしく咳払いをすると、気を取り直したように自分たちの間に座るジェラルドの肩に手を置き、
「そしてこれが、我々の大事な息子の……」
「ジェラルドだよ!」
ジェラルドは嬉しくてたまらないと言った風に瞳を輝かせ、シャルルを見上げて叫ぶように言いました。シャルルは優しい微笑を向けました。
「やぁ、ジェラルド、きみとお知り合いになれて、わたしは嬉しいですよ。皆さん、どうぞよろしく」
コレットはなんだか夢の中にいるような気持ちで、夜の月明かりの下、人間の公園のベンチで和やかに語らうアルマンやジェラルドと、風変わりな猫のシャルル・ド・ラングを見つめていました。それでつい独り言のように、ぽつりと言葉を漏らしていました。
「やっぱり、今日はとっても不思議な日なんだわ。結局目的は果たせなかったけれど、思い切って家を出てきて、きっとよかったのね」
コレットは皆の注目が自分に集まったのに気がつくと、慌てて笑顔を作って見せました。
「まぁ、ごめんなさい、わたしの言い方、落ち込んで聞こえたかしら? 楽しいひと時に水を差したのならごめんなさい。でもわたし、ほんとうによかったと思って言ったのよ。この通り、もうすっかり元気も取り戻せたし……」
そのとき、シャルルが静かな口調で、三匹を代わる代わる見つめながら尋ねました。
「皆さんは森の奥にお住まいとのことですが、どうしてこのような街の公園などにいらっしゃったのです? あなた方にとってはさぞ危険な旅だったでしょうに。もしよろしければ、事情を話してはいただけませんか?」
三匹は顔を見合わせながらもじもじとして、なかなか話し出そうとはしませんでしたが、やがてコレットが口火を切って話し始めました。
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