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そうやって白い月を見上げていたコレットは、急にあっと叫んで勢いよく立ち上がると、胸の前で拳を固く握って大きく目を見開き、白くにじんだ月を食い入るように見つめました。急いで何度もごしごしと目をこすって涙を拭い、息をつめて伸び上がらんばかりに月を見上げていたコレットは、やがてハッと息を呑んで、大慌てで巣穴の中に戻りました。
「あなた、大変よ!」
コレットの金切り声に、アルマンとジェラルドは驚いて奥から飛び出してきました。
「いったいどうしたんだい、そんなに慌てて」
「お母さん、何かあったの?」
コレットはアルマンとジェラルドを見ると、胸を押さえてへなへなと床に座り込みました。心配して顔をのぞき込む二匹を前に、コレットはうまく呼吸ができずに何度か口をパクパクさせた後、ようやっと息を整えると、自分でもまったく信じられない心持ちで叫びました。
「月に……月にあの子がいるのよ!」
「あの子?」
怪訝な顔で聞き返したアルマンに、コレットはいきなりがばっと身を起こすと、かぶりつかんばかりの勢いで飛びついて、
「あの子よ! わたし達のギィよ……!」
アルマンはコレットの勢いに押されて尻もちをついてしまいました。それから目をぱちぱちとしばたかせ、じっとコレットを見つめました。
「なんだって? いったい何を言っているんだい?」
「だから、ギィですよ! あの子が、あの白いお月さまの中にいるのよ!」
そう叫んだ後、一瞬動きを止めたかと思うとコレットはいきなり前掛けで顔を覆って、激しく声を上げて泣き出しました。
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