カミラ、おにぎりを食す

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「何か犯罪に巻き込まれたのかも知れん....ちょっと待ってなさい」 爺は服の中から何やら取り出した。 「何じゃそれは?」 我の問いを無視して小さな箱を触っておる。 「あ、もしもし?警察?」 箱に向かって話しかけておる....大丈夫か?この爺。 「はい、そうです....小学生くらいの外国人の女の子が....はい、はい....お願いします」 独り言を繰り返した後、爺は箱を服に戻した。 何やら怪しい爺じゃ....魔力は感じないが油断禁物じゃな。 「お嬢ちゃん、すぐにお巡りさんが来てくれるからここで待っていなさい」 「オマーリさん?初めて聞く名前じゃ」 柳沢の人形か? 「ところでお嬢ちゃん、お腹は空いてないかい?」 おお!そう言えばあれから何も食しておらんぞ! 「言われてみれば我は空腹じゃ」 「そうかそうか、ならこれを食べなさい」 爺は何やら包みを取り出した。 「何じゃ?それは」 「うちの婆さんが作った昼飯だ」 そう言いながら爺が開けた包みを見る。 「こ、これは米じゃな!我は知ってるぞ!」 米はニホンで食したが、まことに美味じゃった。 だが、あれとは形が違う。 「何故このような形なのじゃ?」 「おにぎりを知らんか、まあ外国人なら仕方ないな....とりあえず食べなさい」 爺に促されて手を伸ばす。 「ほお....これは持ち上げても崩れないな....この黒い紙は何じゃ?」 「それは海苔と言って海で取れる海藻を乾かした物だよ...さあ食べなさい」 「どれ」 一口頬張ってみる。 ! おおおっ? 「な、何じゃこれはっ!」 美味じゃ! この白い米粒には塩で味をつけてある....それを包み込むこの黒いノリとかいう物が更に米の味を引き立てておる! 「ん?」 二口目で何か違う物が我の口に飛び込んできおった....おおおっ! 「何じゃ?何を仕込んだのじゃ!」 口の中に唾液が溢れる! 「梅干しだがお嬢ちゃんにはちょっと無理だったかな」 確かにこの強烈な酸味は今まで経験がない....ないが、その向こうに何とも言えぬ独特の香りが漂っている。 これは....米に合う! 「いや、これも美味じゃ!」 これは魔法か?
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