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7. 宵待ちながら
鎌倉には山のような大きさの大仏――像があるのだと、渡喜が教えてくれた。
それを見てみたいと篭は思っていたが、その時間はなさそうだった。
街の外れにあるという寺へ向かって、彼らは歩いていた。
渡喜と宋十郎が街を歩き人と話して集めた情報によると、湫然寺の今の僧正はこの辺りでは有名な人物で、甘粕和尚と呼ばれているらしい。
戒名を藍叡というその和尚は、北地で荒行を積んだあと鎌倉へ上ってきた修行僧だった。酒を密造していた寺院に乗り込んでいって、酒蔵を叩き壊して当時の僧正を追い出し、貯め込まれていた金を使って寺院を再建した。この時に残った酒粕で甘酒を作り、近隣の庶民に配って歩いたので、そういう綽名がついたのだという。それが三十年ほど前のことで、以来歳時の際に甘酒を作って振舞うのが、寺の習わしのようになっているそうだ。
もっとも甘粕和尚が有名なのはその英雄譚によるもので、憑き物落としをするという話を知る町民は、ほとんどいなかった。そのため宋十郎は既に一度寺を訪ね、湫然寺が件の寺院であるかどうかを、確かめてきたということだった。
和尚はとても気さくな老人で、突然現れた宋十郎にも面会し、彼が喜代と篭の症状をかいつまんで説明したところ、まずは二人を診てみようと言った。
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