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『やめてくれ』
咄嗟に、篭は言っていた。梟は頭を斜めに傾げた。
『どうして?』
『奥で寝てる人は、恩人の息子なんだ。死んだら茂十が悲しむ』
『でも、あの人はもう死にかけてるんだよ。私が拾わなくてもあの人はすぐに死ぬし、厄魂は正しく片付けないと面倒なことになる場合もあるんだ』
『そんな、どうにかして、治せないの』
篭は必死になっていた。茂十の息子を助ける方法を考えていたのに、その息子がむざむざ殺されてしまうのを見過ごすなどできない。
薊はさらに頭を傾げ、ううんと唸った。
『どうだろう……体に別の魂を入れたら、あの体は死なずに済むけど…』
『別の魂って?』
『別の魂だよ。死にかけてるやつじゃなきゃ、何でもいいよ』
『燕のでも?』
それを聞いて、梟は燕を見下ろした。
『……君の魂を、あの人に入れるの?』
その時になってやっと、篭は自分の言葉の意味に気付いた。
彼は恐る恐る、薊に尋ねた。
『入れたら、あの人は助かるんだよね?そしたら、おれは死ぬ?』
梟は悩ましげに頭を傾げ、少し間を置いて、答えた。
『方法は、二つあるんだ。一つ目は、あの人の厄魂を抜いて、空いた体に君の魂を入れる。その場合、あの人の魂は現世を去るけど、体は君のものとして生き続ける。二つ目は、あの人の厄魂と一緒に、君の魂を入れる。その場合、二つの魂が一つの体に同居することになる。その先のことは、ちょっと私じゃわからない。私はただのお遣いだもの』
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