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二つの方法を聞いた篭は驚いたが、少なくとも希望を感じた。彼は考えながら言った。
『でも一つ目の方法だと、元の魂は体を離れちゃうんだよね?』
『うん。でも二つ目の方法だと、君は無事じゃすまないかもしれないよ。二つの魂を一つの体に入れると、ほとんどの場合、どっちかが相手を追い出したりするんだ。病気の魂が、君の魂を蝕むかも』
恐らく魂が追い出されたりすれば、それは現世での死を意味するのだろう。しかし篭にとっては現世での死よりも、茂十の悲しみのほうが、よほど大きく辛いことに思えた。
『別にいいよ。なあ薊、おれの魂をあの人に入れてくれる?あの人を助けたいんだ』
今度は梟が驚いたように、大きな目を瞬きさせる。
『君、変わってるね。人間を助けたいなんて。でも、面白いね』
『お願い』
梟は大きな頭を、うんうんと頷かせた。
『いいよ。いや、いつもは駄目なんだけどね。今日は鳥居守が、お願いごとをされたら一つだけ叶えてもいいって言ってたんだ。君は運がいいね』
『ありがとう』
篭は言った。もし彼の魂が、今は厄魂とやらしか入っていない体に入ったら、息子の病気も治るかもしれない。茂十はきっと喜ぶだろう。
すると、梟は月光を遮るように、白っぽい大きな翼を広げた。
『それじゃあ、君の願いを叶えて君の魂をあの人の体に入れるよ。何が起こるかわからない。君はもう二度と、目覚めないかもしれない』
小さな恐怖のようなものを胸の内に感じたが、篭はそれを振り払うように首を振り、あえて微笑んだ。
『大丈夫。薊、ありがとう。あんたに会えてよかった』
梟の翼に視界を覆われると、彼の意識は眠りに落ちるように闇に溶けていった。
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