6. 日に焦がれ

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 しばらく屋根伝いを走っていたが、一度板葺きの屋根を踏み抜きかけてから、適当な裏路地へ降りた。篭は喜代と座っていた大路を探した。  胸は痛いし、何が起きたのかよくわからないし、街は喧しいし、喜代を置き去りにしてしまうし、とうとう彼の目尻から涙が溢れてきた。  先ほどの坊主はもちろんだが、がやがやと騒ぎ立てる野次馬が、彼には恐ろしかった。  あの人間たちはあんなに寄り集まって、坊主の味方をするでもなく彼を助けるでもなく、何をするつもりだったのだろうか。どちらかが倒れたら、その亡骸から服や肉を剥ぎ取って、食うつもりだったのだろうか。あの人間たちはそれほど邪悪には見えなかったが、それならばなぜ、誰も盗人を捕えず、坊主のことも篭のことも助けなかったのだろうか。  彼は砂埃で汚れた袖で涙を拭い、通行人の間を縫いながら早足で歩いた。 そのうち駆け足になり、やっと先ほどの大路と、芋の屋台を見つけることができた。  向かいの塀の足元に、喜代が小さく蹲っていた。  彼は、千切れそうに緊張していた心臓が、やっと和らいだのを感じた。 「喜代、ごめんね」  駆け寄ってゆくと、顔を上げた喜代が、すぐに飛びついてきた。  彼は喜代を抱き上げると、塀に背をつけ、地面の上に座り込んだ。  しかし胸元に触れられて、痛みに呻いた。  赤い火傷が残っている。この傷は、黒い泡が出て癒えるわけではなさそうである。 「大丈夫?」  篭の膝に乗りながら、喜代が訊ねた。 「うん……痛いけど、治ると思う。大丈夫だよ」  喜代が、彼の赤く腫れた皮膚を見つめていた。  二人とも、腹は減ったままだ。  じくじくと響く胸の痛みを無視して喜代を抱きしめ、鼻を啜った。  盗人を追わなければよかったと、篭は思った。
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