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1-1 祖父の遺言
『悠、この世には人の及ばぬ住人がいるものなんだぞ』
茜色に染まる縁側で、悠は祖父の膝の上に乗って古い本を広げたままそんな声を聞いて振り向いた。
『人の及ばぬ住人?』
『あぁ。幽霊や妖怪、神や仏の類いのことだ』
『いるの?』
幼い悠は首を傾げて問いかける。
それに祖父は思わせぶりな笑みを口元に浮かべ『どうだろうな』と言う。だがその笑みは悠には、「いる」と肯定しているように見えた。
足下に、祖父の飼っている三毛猫がきてすり寄ってくる。
『いたら、すごいね』
『怖いか?』
『分からないけれど……ちょっと、ワクワクする!』
子供らしい好奇心に目を輝かせた悠を見上げて、足下の三毛猫が一声鳴いた。
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