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 そして冬。  年を越してしまえば自由登校の真幸が学校に来ることはほとんどなくなる。卒業式も迫っている。僕と真幸の接点もとうとう完全に切れちゃうんだなあと思うと寂しいような苦しいような切なさを感じた。  出会った頃のように桜が咲けば真幸は大学生で、僕は3年になる。真幸との出会いはもしかしたら神様が見せてくれた淡い夢、なんてロマンティックな現実逃避をして寂しさを紛らわせていた。 「おい、チビすけ、これ、やるよ」 「だから僕はチビすけじゃないってば、て、えっ? 鍵?」 「接点、いるだろ?」 「なんで?」 「好きだから?」  細い細い接点が、途切れることなく続くことに僕は泣きそうになった。手にしたそれは確かな重さで僕に存在を訴える。いつかの時みたいに煙草を吸いながら、真幸は笑った。  春夏秋冬、巡る季節を真幸と感じたい。 【終】
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