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 それから僕らの接点がかっちりとくっついたかと言うと、やはり細く長くと言った感じでこれと言って何かが進展したわけでもなくかといって離れてしまうわけでもなく、つかず離れずの不思議な関係が続いた。  だからクラスメートは僕と真幸が知り合いだなんて想像もしていなかったに違いない。秋の体育祭の借り物競争で、僕は何ともべたな『憧れの先輩』という紙をひいた。部活もしていない、特別社交的でもない僕に先輩と言う知り合いなんているはずもなく、一瞬うーんと唸りかけたが、ふと真幸のことを思い出した。真幸のさりげない優しさが好きだ。これって憧れ? わからないけど知っている先輩なんて真幸しかいないわけだし、と自分のクラスのテントで寝そべっていた真幸の手を掴んだ。 「おい、チビすけ」 「チビすけじゃないって」 「で、なんだ?」 「これ」  ずいっと『憧れの先輩』と書いた紙を見せて 「先輩だよね、一応」 と言えば何が面白かったのかしばらく笑ったかと思えば、行くぞ、と僕をまるで荷物か何かのように掲げてゴールに走り出した。自分ではありえない風の流れにちょっとばかり感動したのは内緒だ。  いろんな意味で湧いた秋が過ぎた頃、僕と真幸の距離は少し縮まった。
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