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第一章〜雨の日の出会い〜
雨の中、白無垢姿で走っている一人の女鬼がいました。その女鬼は泥で汚れた白無垢を気にする暇もなく走り続けると洞窟がありそこで雨宿りをした。息を切らし赤黒い角は雨の水滴をポタポタと溢し黒くて長い髪も雨のせいでびっしょりと濡れていた。顔も化粧でぐちゃぐちゃになっていた。女鬼はその化粧を落とすため手にお椀の形を作りそこに雨の水溜めて化粧を落とした。女鬼は岩に座り雨が止むのを待つと女鬼は睡魔に襲われ眠ってしまった。洞窟に近づく人影は赤い傘をさして顔は見えないが女鬼はその存在に気付かずまだ眠ったままだった。赤い傘をさした人物は黒い尻尾のようなものを二本出して女鬼を包むように抱え何処かに行った。たどり着いた場所は小さな小屋のような家があり赤い傘をさした人物は中に入り傘をしまうと黒い髪に石榴のような赤い目をして頭には狐のような耳がついていた。家の中には白い髪をした老婆が豚汁のようなものを作っていて老婆は赤い傘をさした人物に布切れのようなもので彼の尻尾や頭を拭いた。
「酷い雨だね。頭も濡れているじゃないか、この傘、駄目だったかい?」
「そんな事ないですよ。ただ僕の尻尾じゃ雨を防げないから傘を使っただけですよ。おかげでこの人はそんなに酷くは濡れていませんが、どうやら洞窟に入る前は雨に撃たれていたみたいでこのままだと風邪を引いてしまうから僕の尻尾で暖めようと」
「そうかい、風呂は出来てるから入って来なさい。新しい着物は置いてあるから。この人の体も拭いてあげないとね」
老婆は女鬼を抱き抱え泥で汚れた白無垢を脱がし布切れで体を丁寧に拭いた。そして押し入れから赤い着物を出し女鬼に着せ蒲団に寝かせた。すると女鬼は目を覚まし視線を老婆に映すと老婆は笑いながら声をかけた。
「おや、目覚めたかい。酷く汚れているね、折角の白無垢が台無しじゃ。後で洗って返すね」
女鬼は汚れた白無垢を見るととても悲しい顔をしながら老婆にこう言った。
「入りません。むしろ質屋に入れるか捨ててください。私にとって、それは呪いのような物です」
女鬼の悲しい顔を見た老婆は女鬼の頭を撫でながら優しい顔で笑う。
「何か訳ありのようだね。無理に言わなくて良い、行く宛が無いなら此処に居なさい。迷惑なんて思ってないから、むしろ大歓迎よ」
老婆の言葉に女鬼は涙を流しながらお礼を言った。
「ありがとうございます」
「アンタをここまで運んで来たのは椿なんだよ。お礼なら、後で椿に言いな。さぁ、暖かい豚汁が出来たから、たぁんとお食べ」
老婆は赤いお椀に豚汁を入れ箸と一緒に女鬼に渡した。女鬼はその豚汁を受け取り「頂きます」と言った後、最初は汁を少し飲んだ。
「美味しいです。とても暖まりました」
「そうかいそうかい。沢山あるから気にせずお食べ。いなり寿司もあるから食べな」
老婆はいなり寿司を出して女鬼に勧めると女鬼はいなり寿司を一つ取ると口に運び一口食べた。
「このいなり寿司、とても美味しいです。こんな美味しいいなり寿司初めて食べました」
女鬼の美味しそうに食べる顔を見て老婆は「そうかいそうかい」と言った。女鬼はいなり寿司を食べ終わると次は豚汁の具を箸で食べ、汁を飲みの交互に食べていくとお椀の中はあっという間に空になった。
「ご馳走さまです。とても美味しかったです」
女鬼が食べ終わると先程、女鬼を此処に運んだ狐男が風呂から上がり老婆はそれを見かけると親しげに話かけた。
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