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私は根暗なタイプだけど友達にはことかかなかった。
小学生のころから背が高く、腕を組みたがる女子が多かった。よく、だれのことが一番好きなの!? と喧嘩になった。私の周りは常に女の子たちに囲まれていた。友達だった、はずだ。
その周りの女子の中に好きな子がいたのだろう、とある男子に喧嘩を売られたことがあった。私は空手を少々嗜んでいたので、返り討ちにしてしまった。
それが評判を生んで、私はモテ道の極みを走り続けた。喧嘩を売られてもどうしてか、返り討ちにしてしまう。喧嘩を売られることもあるだろうと思って日々、精進し続けたのがいけない。
女子のわりに引き締まった体つきをしていた。今も腹は割れている。
「そうか。いちご牛乳は飲まずに、緑茶か水しか飲まないのか」
「それを真似てどうする。いちご牛乳飲んでるやつだってモテるやつはいる」
コンビニで買ったペットボトルのお茶。緑茶なんて誰でも飲んでいる。
と、私はあることに気づいた。
「お前、背が伸びたな」
「今頃かよ。遅いな、数年前から抜かしてたわ」
「全く、気づかなった。最近、彼女ができたそうで忙しそうだったじゃないか」
「いつの話だよ。お前、俺のこと全く興味ねえのな。高校受験のとき別れた。俺がお前の高校をリサーチし受験するのを聞いて、仲を疑われた。別に相手から付き合おうと言われてそうしただけだしな」
「薄情なやつ。ところで、私が受験する高校を嘘ついていたのに、よくわかったな」
「お前の親に聞いた。逃さないぞー」
「……ちっ」
そう。こいつはずっと同じクラス、出席番号も近かった。私は早川。こいつは速峰。速峰は、ずっと私の後ろをついてまわり、何かと真似をしてきた。使っている文房具、好きな食べ物、テレビ、読書、あと、シャンプーと、美容室の担当。個性はないのか。
「だって、お前、かっこいいもん」
もん、ってつけるあたり性格は速峰のほうが女子力高いだろう。私はいちご牛乳も飲まない。
「まあ、飽きるまでいるがいいさ。私は、彼氏でもつくるから」
「――ん?」
速峰がわかりやすく動揺した。やっぱりな、そういうことは想定してないわけだ。
「仮に高校生活三年間、お前が私の後ろで彼女つくったり、別れたりしながらずっと一緒にいたとしよう。私の家は貧乏だ。妹らも高校に行かせてやりたい。バイトもするが仕事も早くしたい。すると、お前の人生とはきっと離れてしまうだろう」
「はいはい」
「その前にお前は私から巣立ちをしておくべきだ。本来なら、自分の人生を歩むべく高校も別であった方がよかった。お前の成績でも上は目指せた。幸い、総合学科では受験も想定しているコースもある。コースは選べるから、迷うな。私はこの高校で就職するためだけの勉強しかしない。そのうち、就職先で結婚もするつもりだ。その前に恋愛くらいしておかないと、いざ社会人になって経験値ゼロでは結婚も遠のく」
「ほうほう」
「今、言った通り、私の人生は先まで予定で埋まっている。そのレールにお前を巻き込みたくない。高校では、別行動で行こう」
「なるほど、なるほど」
「では」
私は早速、バイトの面接があるので、コンビニ前で別れた。後ろを振り向くと、速峰がまだ、いちご牛乳をもって地面を見つめていた。
自動ドアの前で邪魔だから早く退くべきだ。邪魔なやつめ。
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