-おはよう(昼)-

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薄い生地越しに暖かい手に撫でられ、心も体も溶かされてしまう。 ヘルはルシファーの首に両腕を回して、淡い期待に身を捩らせた。 「強いし、頭も良いし、こんなにえっちな身体なのに」 「んー、ぁ……っ」 「ここが、時々すごく弱い」 「ぅん……ルシファーのせい、だよ」 もう、1人には戻れなくなってしまったことを、どうしてくれるんだと詰りたい。でも、その恐怖すら愛おしいような気がして、今を幸せと思う感情だけが残る。 ルシファーの手が、服の上から心臓に触れる。服と皮膚と肉を隔てていても、直接触られている感覚がある。身体の内側から愛撫されているように、体温が上がっていく。 「ほら、すぐ気持ち良くなっちゃって。そんなんだと、悪魔に付け込まれるよ」 「もう付け込まれてるもん、サタン様に」 最後はルシファーの耳元で、熱い吐息混じりに囁くと、お返しに耳たぶを甘噛みされる。竦めた首を指先で撫でられ、ヘルはじわりと腹の奥が温かくなった。 「…ヘルはいつも美味しそうで困るよ」 「んふふ、遠慮なくどーぞ」 「余裕だね。またイき狂いたいの?」 「それも魅力的だけど、今は優しいのが良いな」 キスがしたくなってルシファーの唇を指で撫でると、手首をとられる。恋人の手を握るにしては強い力に、細い骨が軋む。 「俺が素直に言うこと聞くと思ってるね」 掴まれたところは、後で内出血を起こすに違いない。ルシファーに付けられた、新しい痕だ。 ヘルはもう一方の手をルシファーの頬に添えると、唇の触れないギリギリのところまで顔を寄せた。 「思ってるよ。ルシファーは、俺のお願いを聞いてくれる。俺は、特別だから」 じっと、黒い瞳に覗き込まれ、心の内を探られる。相手の弱みを握り、魂を奪う視線。隠し事や嘘は、通用しない。 しかし、その瞳を見つめ返すヘルには、隠し事も嘘もない。“自分は特別だ”と、心から信じている。 「……そういうところが気に入ってるんだ」 ルシファーは、これまた珍しい笑みを零すと、キスを望む恋人の唇を柔らかく塞いだ。
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