ほら吹き少年と吟遊詩人

3/7
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 その夜は、村をあげての宴になった。  広場で、皆で火を焚き、焼いた肉を食べて、詩人がハープやリュートの音にのせてうたう英雄や神々の伝説を聴くのだ。  少年は、詩人の語る壮大な物語に心を打たれた。  毎晩、詩人がこうして物語をうたってくれたらいいのに、と。  その英雄伝説がひと段落したとき、休憩をとっている詩人が、少年に声をかけた。 「ところで君は昼間、どうして柵なんかにつながれていたのかね。  羊でもあるまいに」  くすりと笑いながら言われて、少年は少しむっとした。  それで答えるのをわずかにためらった隙に、そばにいた村の男が、大声で馬鹿にするように言った。 「そいつは、ほら吹きで困ってるんだよ。  だから罰として、いつでもあそこにつながれているのさ。仕事もしねえで」  少年は悔しかった。  吟遊詩人がまた、くすりと笑って言った。 「そうか。そいつは困るな」 「まったくでさ」  男が豪快に、我が意を得たりというように叫んだ。  しかし、詩人は首を横に振った。 「いやいや。ほら吹きがいつも縄でつながれてなくてはならないとなると、  私なんぞはいつでもあそこに縛られていないといけないから、  困るなと言ったんだ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!