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その夜は、村をあげての宴になった。
広場で、皆で火を焚き、焼いた肉を食べて、詩人がハープやリュートの音にのせてうたう英雄や神々の伝説を聴くのだ。
少年は、詩人の語る壮大な物語に心を打たれた。
毎晩、詩人がこうして物語をうたってくれたらいいのに、と。
その英雄伝説がひと段落したとき、休憩をとっている詩人が、少年に声をかけた。
「ところで君は昼間、どうして柵なんかにつながれていたのかね。
羊でもあるまいに」
くすりと笑いながら言われて、少年は少しむっとした。
それで答えるのをわずかにためらった隙に、そばにいた村の男が、大声で馬鹿にするように言った。
「そいつは、ほら吹きで困ってるんだよ。
だから罰として、いつでもあそこにつながれているのさ。仕事もしねえで」
少年は悔しかった。
吟遊詩人がまた、くすりと笑って言った。
「そうか。そいつは困るな」
「まったくでさ」
男が豪快に、我が意を得たりというように叫んだ。
しかし、詩人は首を横に振った。
「いやいや。ほら吹きがいつも縄でつながれてなくてはならないとなると、
私なんぞはいつでもあそこに縛られていないといけないから、
困るなと言ったんだ」
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