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「へ?」
村人は、頓狂な声をあげて、頭をかいた。
詩人は再び少年を見て言った。
「君は、私の語る英雄物語を、ずいぶん熱心に聴いていたね」
「ええ!」
少年は頬を紅潮させ、「毎晩でも聴きたいほどです」と言った。
「神々の話も?」
「ええ! もちろん! あなたの知っている、すべての物語を聴いていたいんです」
「君はほら吹きだそうだけど」
「え。ええ」
少年は否定できなかった。
村人が相手なら、どんな言い方でも彼は自分を正当化しようとしただろう。
しかしなぜか、詩人の前ではそれができなかった。
そして初めて、その自分を恥じていることに、自分で気づいた。
少年は、どうしてだか、自分でもわからないうちに嘘をついてしまうのだ。
それは自分でも止められない、どうにもできない衝動なのだ。
少年は恥じ入ってうつむいていた。
すると詩人が言った。
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