ほら吹き少年と吟遊詩人

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「嘘には使い道があると思うんだ」 「使い道、ですか?」  少年にはよくわからなかった。  詩人は、こう言った。 「君は、自分の衝動を抑えるんじゃなしに、  もっといい嘘のつき方を覚えればいいんだ。  そうすれば、その衝動はよい道を与えられて、そこへ流れていく。  衝動を制御するということは、たぶんそういうことなんだと  私は思う」  少年がきょとんとしていると、詩人は続けた。 「人を楽しませたり、真実を語るために、あえて嘘の物語を語ることもある。  それは、嘘の良い使い道なんじゃないかと思う。  ただ単に、人をだまして嫌がらせたりするんじゃなしに」  少年には、やはりよくわからなかった。  詩人は少し、はにかんだように笑った。 「えらそうなことを言っているかなあ。  本当は私自身、まだそれを完全に理解しているわけじゃない」  だけど、と、詩人は考えながら続けた。 「神々や精霊の話は、いまでは多くが嘘や誇張だと思われている。  日常の中では、それは他愛もないただの物語だ。  だけど物語には、人を動かす力がある。  それはきっと、そこに真実を含んでいるからなんだ。  そう思わないか」  よくわからない、と少年は思ったが、どこか感じるところがあった。  それでこう言った。 「わかりません。  だけど、神々の話はとても美しい。英雄の話も」
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