いきなり借金するなんてお先真っ暗じゃない?

3/3
前へ
/341ページ
次へ
「ええ、こんな事もあろうかと、マーフィーに頼まれていたのよ。緊急事態に陥った時はこの紙を使いなさいとね。まさかこうも早く起こるなんてね……。マグ家の遺産を売り払いなさいと言う事です」  遺産? え? 遺産って、あの地下の書庫の事? 確かに金銀財宝は山の様にあるけど、それを売れって事なの? 「え、ちょ、ちょっと待って下さい! いきなりそんな事言われても……」  大叔母様の遺産を売るのは流石に気が引ける。後世に残したい大事な物ばかりなのだ。 「ええ、いきなり全てをぶんどるのは流石に可哀想ですから、何日か猶予を与えます。強制では無いですよ? ただ借金取りが家に押しかけてきても知りませんからね? 捕まったら何をされるか……分かりますよね?」  それは怖そうだ。噂によると石になる呪いを掛けられ、海の深くに幽閉されるらしい。そんなのまっぴらごめんなのである。 「うう……嫌だぁ、それは嫌だぁ」 「腹を括りなさい。起きてしまった事は仕方ないの、さあ早く家に帰って身辺整理をするのです。家も無くなりますからね、住居も探しとく様に」 「えーーーー!? 家も無くなっちゃうのですか!?」 「大丈夫です。売りはしますが、私が買います。マーフィーの家だもの、それくらいは協力しますわよ。ただ、もう一度住みたいのでしたらお金を全部払ってからにしなさい。そこは甘えさせませんからね!」  なんだかんだ意外に優しい一面が垣間見え、ほっと胸を撫でおろすのだが、事は急を要するみたいだ。早速家に帰って必要な物を残しとかなければいけない。 「ああ、家宝が……と言っても全然把握はしてないんですけどね。はぁーー……、分かりました。教えて頂きありがとうございます」  ペコリと頭を下げ、その場を後にする。  が、その前に宣言しておく事があった。 「魔導院長様、これだけは宣言させてください。私は絶対にあの家を買い戻しますから! では失礼します」  ガチャリとドアを閉め、背中を壁に預けて一息入れる。冷たい感触が気にならない程、思考は別の所に傾いていた。 「ぬぬぬぬーーーー!! 怒涛の連続だよもう……、まあ愚痴を言っても仕方がないし、早速家に帰って身辺整理をするかな。ああ、後家も探さないと、働き口も……出来るかなぁ、不安になてきた」  学院に関しては国から補助が出る為、その点は心配がない。ただ、これからの生活を考えると、絶対に働かざるを得ないのである。  カスタマイズされた魔法の箒に跨り、とりあえず家に帰る事にした。必要な物を集めなければいけない。 「忙しくなるなぁ」  まずは地下の書庫を調べないと、何があるのかを把握しないとね。
/341ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加