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「さてさて、とりあえず地下の書庫に行きますかね。えーっと、鍵はーっと」
壁に幾つもぶら下がってる鍵達のネームプレートをひとつひとつ確認し、地下室と書かれたのを探すのだが、一向に見つからない。
「あ! そういえばあの扉はマグ家の魔力に反応するんだっけ。忘れてた忘れてた!」
やはり学習能力の低下が著しい。元々高い方ではないのだけれど、自分の家の事さえ忘れるのだからよっぽどである。
「いーもんいーもん!」
カンテラを持ち、地下室へと足を運ぶ。
そういえば、この壁面に飾られてる絵画や美術品も価値がある物だろうか。実際いくらで売れる物なのだろう。ていうか鑑定士や商人が来て値段を決めるのなのか、買い叩かれはしないか心配だ。
ただでさえ3億デルも借金があるんだ。半分くらいにはなって貰わないとこっちが困る。
「あーーーーー……、3億デルかーー……。そんな額どうしろって言うのよ、とほほ」
一般的な魔法使いの稼ぎ、と言うのはてんでバラバラで当てになりはしない。
が、自分で店を構えてたり、冒険者となって雇われで稼ぐとなると、1日高くて1万デルらしいのだ。つまり……。
「えーっと、1万デルかけるの10で10万デル、それで……えーはいはい、どんなに早くても10年は掛かる計算だよね」
ここでミソなのが、高名な魔法使いでもそのくらいということ。私みたいなペーペーのしかもFランクの落ちこぼれなんて、相場どころか雇われさえもしないのが現状だろう。現実はいつだって厳しいのさ。
厳しい現実の事を考えていたら、いつの間にか地下の書庫まで足を運んでいたらしい。相変わらずかび臭い所だが、そこら中から魔具の魔力が溢れ出してきている。今の自分では到底扱いきれそうにない。
「じゃあまずは掃除かな。ハタキと羽モップは置いてるし、蛇口もある。とりあえずー、埃から取るかな。後使えそうな物も拾っておこうっと」
パタパタ
パタパタ
本当に色んな物が置いてあるのだなと感心してしまう。大叔母様は収集家とは聞いていたけど、これ程の物をどこで集めて来たのだろう。やっぱり魔王城かな。
仰々しい仮面から、聖なる力を放つ剣まで、様々な物が所狭しと場所の取り合いを開いている様だ。どれも高そうな物ばかりである。
「はー、これはどれも扱えそうにないものばかりだなー。結局売らないといけない訳だし、あんまり見ない様にしとこう。……情けないな私……」
書庫とは言うが、本はそこまでの量は無い。しかも魔法の本などは殆どなく、どれもこれも娯楽小説ばかりである。要は遊び部屋みたいな物だ。
「あ、これ金の塊じゃん。金って換金しやすいし、ちょっとくすねておこう。困った時に売れば良いよねーってうわぁ!!」
目の前の金に足元がお留守になっていたのか、とある宝箱に足をひっかけ、ずっこけてしまった。
「痛ったぁーーーーーい!! もう!! 何なのよ!」
宝箱は先ほどの衝撃にびくともしなかったのか、一ミリもその場から動いていない。
「んんー? 何か重い物でも入ってるのかな、ちょっと開けてみよっと。こういうのってワクワクするよねー」
先ほど、あまり見ない様にしようと言った事などすぐに忘れ、ゆっくりと、重たい上蓋を押し上げる様にカパっと開いた。
「……星?」
「おう、星だぞ」
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