52人が本棚に入れています
本棚に追加
齢17歳にして、早くも3億デルの借金をする羽目になるなんて、誰が予想できたであろうか。夢、これは夢なのだ。
「エーフィー・マグ? 聞いているのですか?」
ううう、聞きたく無い聞きたく無い。ただでさえ今日は気持ちがブルーなのに、こんな追い討ちみたいな事が起こるなんて。いくら取り柄が元気な私でも、流石に泣きそうになるよ。
「は、はいぃ……––––。聞いてますよ、勿論」
「貴方って、マーフィー以外の親族は居なかったのでしたっけ? 確か両親ともお亡くなりになられてるわよね?」
私が小さい頃、母と父は流行病に掛かり、命を落としている。
物心付いた時には隣には大叔母様しか居なく、実質親みたいなものであったのだ。
「ええ、そうですが……は! つまり、そう言う事ですか?」
「察しがいいわね」
そのお金を、誰が払うと言うのだろうか。勿論、私しか居ないのである。
しかし払う当てなど無い、お金すら稼いだ事が無いのだ。
「良い仕事先を紹介しておくわ。貴方得意なことってあるかしら? 親友の姪ですもの、そのくらいの協力はさせて頂戴」
なるほど、お金を稼ぐには仕事をしなければいけないのか。まあそうだよね、当たり前の事さ。でもこれといって得意な事がある訳でも無く、何か特殊な経験を積んでる訳でも無い。困った、非常に困ったぞ。
「あ、あのー……得意な事って、特に無いのですが……」
自分で言っといて悲しくなるが、事実は事実。受け止めなければならない現実である。
「ふうむ、そう言うと思った。ハァ、困りましたね。それじゃあこの手段しか無さそうです」
引き出しから紙を一枚取り出し、机の上にそっと載せる。よっぽど大事な書類なのだろう、水や火にやられない様に魔法が掛けられてある。単純そうで、高度な魔法だ。
「あの、これは?」
「遺産売却書です」
「遺産売却書?」
最初のコメントを投稿しよう!